「ア!安全・快適街づくり」のめざすもの

「ア!安全・快適街づくり」のめざすもの

私たちのNPOは、主に東京都葛飾区新小岩北地区のいわゆるゼロメートル市街地を中心にして、「防災“も“街づくり」をコンセプトに活動しているNPO法人です。

 この地域は、荒川・中川・新中川という三つの河川に囲まれた地域です。川はひとたび氾濫すると多くの被害をもたらすことは最近の日本各地でみられることですが、この地域でも70年前にカスリン台風による河川の氾濫で大きな被害を経験しています。

 一方で川に囲まれているということは、その優しさにも触れる機会を多く持っている地域でもあります。葛飾区作成のカルタにも、そうした水に親しむ事例が多く紹介されているところです。

 こうした川の持つ二つの特徴である「浸水」と「親水」、いわば「し・ん・す・い」をキーワードに活動している団体、ともいえます。長年続けている具体的な活動としては、地域の有識者と大学が連携しての小・中学校への「出前授業」や地域内の主な活動主体が一同に会しておのおのの経験を共有する「輪中会議」ですが、最近ではスーパー堤防に限らず「高台化」や再開発なども取り入れた「浸水に対応した街づくり」のあり方についても取り組みを始めています。


 現在はこのような活動を中心にしていますが、NPO発足当時からの流れには紆余曲折がありました。発足(2002年)当初ですが、この地域にはスーパー堤防の計画がされていましたので、河川管理者がスーパー堤防事業に入った時、住民の皆さまと共に考えることができるようにと、スーパー堤防を勉強することから始めました。しかし勉強を進めていくにつれて、この地域の安全を確保する選択肢はスーパー堤防だけではないということ、またこの地域にお住いの皆さま自身がゼロメートル地帯で生活しているという事実を認識することが大切である、と気づきました。

 そこで地域内のゼロメートルの高さを示す水位表示標を設置する活動をはじめました。しかし当初は、地域の不動産価値の下落になると反対もありましたが、ご理解をいただき設置しました(2005年)。そしてこうした水位表示標設置の動きは、葛飾区内及び東京都内へと広がっていきました。

 そして2011年には、地域住民、専門家、行政とNPOが連携しこの地域の安全で快適な街づくりに関する情報を共有し発展させるために、葛飾区新小岩北地区ゼロメートル市街地協議会を立ち上げました。その翌年の輪中会議の立ち上げへと向かうわけです。

 次に地域が水害に見舞われた時の対策として、ボートによる避難・救助活動を始めました。初めは一艘の手漕ぎボートから始めたこの活動は、今では全町会がエンジン付きボートを所有するという素晴らしい展開を見せ、2018年には連合町会の主催で中川においてボートによる救助訓練が行われるまでに至りました。葛飾区役所をはじめ警察や消防が関係した大掛かりなものです。我々のNPOもエンジン付きボートを購入し、この救助訓練に参加しています。

 また2013年から始められた西新小岩三丁目の勉強会では、高台や避難経路の整備、避難所の拡充策など特に「高台化」の効果について勉強を行ってきました。そうした成果をもとに葛飾区に『水害時避難場所高台等整備勉強会の提言』を行い葛飾区が行う新小岩公園の「高台化」事業に弾みをつけてまいりました。


 このようにNPOア!安全・快適街づくりの活動は、ゼロメートル市街地の浸水に対する安全性と親水への快適性を求めた街づくりを目指し、町会をはじめとする地域と東京大学生産技術研究所などの大学そして葛飾区役所などの行政が連携して行うものです。その具体的な連携の事例として、現在、「浸水に対応した街づくりのあり方」(葛飾区)についての調査・検討を行っています。こうした活動は、いわばソフトもハードも含んだ「防災“も“街づくり」といえる活動でして、今後ともこうした活動を続けてまいります。そして願わくは、ここでの活動事例がほかのゼロメートル市街地のモデルとなり発信されることを願っています。



 

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