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稲城市住宅密集地域でのスーパー堤防建設を見学
平成16年11月12日
稲城市住宅密集地域でのスーパー堤防建設を見学
-課題は「全戸合意取り付けと街並み景観保全」-
11月12日、稲城市が矢野口地区で国土交通省と共同で推進中のスーパー堤防建設と街づくりの見学会が行なわれた。参加者は14名と少なかったが、初めての住宅密集地域でのスーパー堤防建設とそこに再度戻ってくる住民達の街づくりの見学会であり、稲城市当局の行き届いた事前説明と現地案内のおかげで、同様な環境下でのスーパー堤防建設と街づくりを目指している我々にとって収穫の多い一日となった。
1.事前説明
稲城市役所での説明の様子
当日はまず稲城市役所で同市が現在推進している都市整備事業全般についての説明を受けたあと、JR連続立体交差事業に併せて実施されている稲城市による矢野口駅周辺の土地区画整理事業及びその一部として国土交通省と共同で行なわれている矢野口地区スーパー堤防整備事業と堤防周辺での街づくりの説明が資料や模型、パワーポイントを使って行われた。
このうち、スーパー堤防建設事業は平成4年から稲城市が矢野口地区の住宅密集地域で進めていた土地区画整理事業の一部が平成12年に国土交通省との共同事業に切り替わったものである。総事業費58.63億円、対象面積3.3ha、延長400m、幅100m、地権者148名、移転対象住居は108戸となっており、平均盛土は約1.4m、最大4mの盛り土が必要とされている。実施は三工区に分けて、西側のA、B二工区の建物移転を平成13年から実施している。このあたりは過去に浸水被害をおこしたことがあり、スーパー堤防建設の必要性に対する理解は得られやすかったが、説明会を行うと一部に反対意見もあった。そこでアンケート調査を実施し、その結果を受けて再度住民説明を行うとともに事業への理解が得られない方々への一時移転依頼・説得、移転合意者に対する引越しの手引き作成、仮移転・家の建て直しに対する補償説明などの資料作成・配布を行う等、きめ細かい対応をとってきた。
現在B工区ではすべての住居移転、盛土が完了、既に戻ってきた人々によって13棟の新しい住居が建設されている。一方多摩川原橋に近く都心からアクセスしたときに稲城市の顔になるA工区では77地権者中数軒が移転完了予定を過ぎても移転に協力が得られず応じておらず、本年度末を目途に移転いただくよう目下鋭意お願い中とのこと。移転反対の理由は区画整理による減歩率(平均約23%)に対する不満、移転先への不満(希望換地は行っていない)、現在実施している業務への影響等が挙げられている。なお、換地に当たっては建売の小規模な住宅が多数あったため、40坪以下では土地提供(減歩)は0、40~80坪は土地提供(減歩)を緩和し、不足する公共用地は市が減歩緩和用地を取得するとともに大地主等から提供を受け、替わりに小地主からは清算金を受領して、これを大地主に払うなどの対策をとった。
堤防完成後その上に建設する街についてはA工区は稲城市の東の玄関口ともいえる地域なので、それなりの景観を持った地域になることを市としては期待している。このため、住民に新しい街づくりの勉強会を開いてもらい、多摩ニュータウンの見学会なども実施してよりよい街にするにはどうしたらよいか検討してもらっているが、既に建設の始まったB地区についてはブロック塀を安全性、防犯上の見地から下2段積程度とし、その上に生垣を設置するなど最低限の基準についての協力は得られたが、家の高さ、屋根瓦、壁の色などはまちまちで景観への配慮に対する希望が受け入れられたとはいえない状況にあるとのことだった。
残る東側のC地区はA地区での経験を踏まえて「移転開始までに全員合意が得られるよう努力する」との意気込みで進めている。
2.現地見学
スーパー堤防B工区の見学
南武線立体交差は既に8割がた工事を終え、矢野口駅駅舎は完成して使用されている。下り線も高架に移転し、来年夏頃には残る上り線の高架移転と側道の整備も完了する見込みである。これにより都道鶴川街道の踏切での渋滞は解消される。又、これに併せて稲城市による駅周辺の土地区画整理による駅前広場の整備も進められている。
一方矢野口地区のスーパー堤防事業については一部移転が完了したA工区と既にスーパー堤防が完成し、一部住居が建設されているB工区の見学を行った。A工区は何軒かの家がまだ残っており、早くに移転した家については仮住居滞在期間が延びることによって新たな費用が発生し、区画整理事業の採算性に影響する。区画整理事業だけに強制収用も困難で、今後の移転交渉の難しさを感じさせる。
他方、一部の住民が戻ってきて、再び戸建住居を建設しているB工区では川沿いの道路に面した部分が一人の地権者によって所有され、その雛壇最上段部分が更地になっていることから、全体の雰囲気がつかみにくいところがあるが、既に立っている家は高さ、造り、壁や屋根の色などバラバラでまとまりがなく、折角の新しい街づくりのチャンスが生かされていないのは残念な感じがした。行政が街並み作りにどこまで関与できるか難しいところだが、これを他山の石として我々の考える地域でのスーパー堤防建設の際の課題としたい。なお、スーパー堤防の川寄りには交通量の多い道路が走っているため川へのアクセスは横断歩道を通らねばならず、水に親しむという面ではマイナスとなっている。
最後に更に多摩川上流の稲城北緑地公園地区でのスーパー堤防事業を見学した。場所は稲城市大丸右岸で面積5.3ha、総延長890m、幅60mにわたって行われたもので、従来公園、学校運動場などに利用されていた地域を整備し、スーパー堤防化したものである。工事は殆ど完了し、残された公園の一部整備も年度内には完成する予定である。大丸地区と矢野口地区と比較してみると矢野口地区のような住宅密集地域でのスーパー堤防事業実施の難しさが一層感じさせられた。
最後に、ご説明頂いた稲城市都市建設部及び国土交通省京浜河川事務所・東京都建設局 関連街路課の皆様方に心よりお礼を申しあげたい。
以上