- 2023.07.02
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輪中会議とシンポジウム
2022/10/15 第15回「輪中会議」を開催しました- 2022.07.03
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令和3年度総会 全議案承認で終了- 2021.12.03
ア!安全・快適街づくりニュース(年刊誌)
2021.09 vol.27- 2021.04.24
輪中会議とシンポジウム
2021/5/9に Web「輪中会議 2021」を開催しました
広域ゼロメートル市街地の抱える浸水リスクを知ろう! ~浸水~
石川元理事長 雑誌投稿文 「頑張れ!フロンティア講座」
頑張れ!「フロンティア講座」
平成15年10月
石 川 金 治
今年の夏は記録的な冷夏であったが、「ナマズ」君は休むことなく活発に動いている。即ち、7月26日に宮城沖地震、9月26日に十勝沖地震と、このところ立て続けに地震が発生している。「今度は東京の番だ」と言う説に従い、自宅待機を命じた会社もあった。このような事前予防は新しい形の防災対策である。我々は常に新事象に関心を持つ必要がある。例えば、新潟地震で県営住宅が液状化により倒壊した。それ以降、重要構造物には液状化対策が施されるようになった。
今回の十勝沖地震でも液状化対策をした港は被害が少なかったが、その対策がなされなかった港は大きな被害を受けている。また、阪神・淡路大地震では、どんな大地震でも倒壊しないと考えられていた高速道路が数百メートルに渡って倒壊した。これは一説によると、紀伊半島に当たった地震波の反射波と地震波が合成されて、異常なカが構造物に働いた結果、倒壊したという。また、新潟地震でも石油タンク火災は発生したが、メカニズムは解明されなかった。
今度の十勝沖地震で、タンクの構造物の揺れとタンク内の液体の揺れが合成され、蓋がその揺れに耐えきれなかったという原因が明らかにされた。地震防災のほんの一部分を見ても、このように日進月歩である。どんな有能な人でも、また力のある組織で働く人でも全ての情報を集め咀嚼することは至難の業である。更に、街づくりにおいては、防災だけではなく、変化の早い市民ニーズに対応した施策が求められている。
東京都防災・建築まちづくりセンターの「住宅・まちづくりフロンティア講座」は術づくりに必要なあらゆる施策についてタイムリーに取り上げ、充実した講師陣を配して、分かりやすく解説している。小さなNPOを率いる私にとってはかけがえのない存在である。今後の益々の活躍を切に願う次第である。
この記事は、東京都防災・建築まちづくりセンター発行 「街並み」 2003AUT/WIN Vol.33に登載されたものです。
コミュニティ再生
平成15年6月
石 川 金 治
バブル時代の地上げによりコミュニティーが崩壊した。また、郊外型の大規模な商業施設の進出で地域商店街が寂れた。更に最近は、生産施設のアジア地域への移転や同地域からの低価格品の輸入により、中小企業は廃業を迫られている。 これらは都市の病理現象として語られている。治癒法はコミュニティーの再生と地場の産業や商業が再び隆盛を取り戻す政策を実施することである。
戦後、プライバシーの保てない封建的な地域社会から脱却することを願って、「文化住宅」という名の地域と没交渉型集合住宅がもてはやされた。ここで育った戦後世代やその子供達はコミュニティーの必要性を再認識し始めた。
その流れの一つがコレクティブハウジングであり、その事例として、荒川区の学校統廃合で発生した跡地に「日暮里コミュニティーハウス」の建設が進んでいる。
ここでは10代から60代までの多世代にわたる人たちがNPOの協力を得て、「隣人を知っている事による安心感と楽しみ」のある住まいを造るべく活発なワークショップを開いている。
また、足立区の「アモールトーア」は、学校給食や高齢者への弁当宅配事業、空き店舗の再活用などを通じて商店街を活性化し、コミュニティーの再興を目指している。
東京の再生は土地の平面的土地利用を立体化する事が避けられないが、その際、よりよいコミュニティーの保持・増進策も同時に進める必要がある。
モデル「街づくり」の有効性
平成15年5月
石 川 金 治
治水事業の進展で、ゼロメートル地帯の住民も水害を忘れて生活できるようになった。また、「地盤沈下がなかった曾祖父の時代には3階のフロアーが庭先の高さだった」と言っても若い人には通用じない。
このようなゼロメートル地帯が、一瞬のうちに海底都市になる危険を速く取り除くため、隅田川では「刑務所の塀」と揶揄された堅牢な護岸を張り巡らした。これは緊急避難施設である。筆者らは本来的施設として、水辺に親しめるように堤防全面の斜面を緩くし、大きな地震が来ても浸水を防げるように後背民地の地盤高を地盤沈下前の高さに復元する「スーパー堤防」建設案を昭和49年(1974年)に提唱し、それ以来この事業に携わっている。
親水性を高めるために、建設したばかりの堅牢な「カミソリ護岸」を除去する案は、財政当局はもちろん河川管理者も当時としては、躊躇する事案であった。それを解決したのは台東区長らの英断である。区は隅田公園の両岸を結ぶ桜橋を建設する際に、取り付け護岸を緩傾斜堤防に改築した。わずか数十メートルの堤防であるが、市民の喜ぶ姿を見て、この事業の支援者が現れた。それは、大川端再開発事業者の住都公団と三井不動産である。この親水性の高い再開発がまた良いモデルになり、沿川の再開発とスーパー堤防のセットは常識となった。
このことは、新しい事業の推進にモデルがいかに有効であるかを物語っている。
おしゃれ条例には魂を!
平成15年3月
石 川 金 治
先般、東京都は「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」を制定した。国策「都市再生」は、時限的で、かつ都心部のみを対象にしているため、東京再生には不充分である。それを補完するために設けられた条例であり、都民の発意で都市計画案を提出できる等革新的な内容になっている。 東京には「震災復興計画」や「戦災復興計画」等壮大な計画はあったが、実行されず、ただ水害防除や幹線道路延伸策等、平面的土地利用を助長する政策が取られてきた。その結果東京は、世界の大都市では類例を見ない平面的な都市になり、市民は、長距離通勤を強いられ、創造的、文化的生活を半ば諦めている。
21世紀の「脱工業社会」の担い手は、現在よりも創造的な仕事に従事する人が増加し、彼らには職住近接環境が望ましい。その解決策が平面的都市から立体的都市への変革である。
この変革には、都市再開発が不可避であり、現在住んでいる市民も住みたくなるような街づくりが求められる。 4月25日にオープンした「六本木ヒルズ」では8割の住人が仮住居から戻ってきて、「住みたくなる街づくり」を見事に実現している。これからの街づくりの良き見本である。
都の「おしゃれ条例」は、今住んでいる市民が「住みたくなる街づくり」を基本概念として運用すべきであり、仏を造ったら、魂も入れるよう、心がけて欲しい。
六本木ヒルズ
これらの記事は建築士会発行の機関誌「建築士」のズバリ直言の欄に掲載されたものを一部修正したものです。