活動の年次記録

平成19年度第1回ワークショップ

平成18年12月16日

「水害対策支援システム」に関するワークショップ

地元葛飾区の皆さんと一緒に
-災害緊急時の住人の避難行動パターンを体感-


各班に分かれて司会者がリード

 平成16年度に内閣官房都市再生本部から当NPOに委託された「全国都市再生モデル調査」に関連する「水害・地震水害対策支援システム」を東京大学の加藤先生にお願いして開発しました。
 このシステムを更に利用しやすいシステムにして一般化するため、今年度河川環境管理財団の河川整備基金による研究助成を受けて、新小岩地域の有志の方達とワークショップを実施しています。このワークショップは、加藤先生を中心とした若手研究者数名が司会役等を担って運営しています。以下に、その第1回の模様を報告します。

 

◆第1回ワークショップの報告

 去る12月16日に開催された第1回ワ-クショップの成果について簡単に報告します。


コーディネーターの加藤先生

 a)災害状況をイメージする

 新小岩地域における水害の危険性に関する情報を共有していない状況で、「いつもの土曜日に水害によって水が出ているという話しを聞いた」場合を想定して、時系列で自分自身の行動を考えてみました。
 議論に先立ち、与えられた情報の信頼性について質問が出され、正しい情報を得ることの重要性が確認されました。
 皆さんの示した行動をみると、①水害についての情報を集め、②避難の準備をし、③避難するという行動パターンは共通していますが、いつ頃危険な状況になるのか、いつ、何処に避難するかといった点については、いろいろな考え方がありました。特に避難する場所については、「自宅に待機する」と「学校」」に大きく分かれました。「近くの高いマンションに避難する」と答えた方も数人いらっしゃいました。
 最も多いパターンは、①水害情報の確認、あるいは外の様子を確認、②貴重品・食料等を2、3階にあげる等の避難準備を行い、③そのまま自宅に待機するか、学校に避難する、というものでした。「2階でじっとしていれば大丈夫」等、自分のところは平気である、または避難しても仕方ないという方もおられました。
 議論の過程では、被災経験のある方が体験談をお話され、被災経験から学ぶことの重要性が再認識されました。

 b)災害状況を類似体験する

 伊勢湾台風の被災地等の過去の被災状況を石川金治さん(ア!安全・快適街づくり理事長)の解説付きで見ました。実際の水害の状況を見ることで改めて水害の実態を確認することができました。それに引き続き、GIS(地理情報システム)を用いて新小岩地域の浸水状況をシュミレーションによって確認しました。刻々と浸水していく家屋の様子が分かり、いつ、どこに避難するべきかを考えるきっかけになったのではないでしょうか。
 街歩きでは、地盤沈下によってゼロメートルになってしまったことを再認識し、さらに浸水したときの水の流れをその場で想像しました。どのように水が流れていくか、家屋にどのように浸水していくかを話し合っている様子が見られました。いつも見慣れている街を違った観点で観察できたのではないでしょうか。


皆さんの行動パターン

 C)水害の危険性を自分の問題として理解する

 各テーブルに分かれて、今回のワークショップで考えたこと、今考えていかなければならないことを整理しました。新小岩地域の水害に対する脆弱性が理解でき、「個人として、また地域といして何らかの備えをしていかなければならない」といった意見が出されました。また、「地域のもっと多くの人に、街の脆弱性について理解してもらい、安全に避難できる街にしていくべきだ」といった今後につながる意見が出されました。その一方で、現在、行政の水害に対する備えや、現在の堤防の強さ等、行政の防災対策を知る必要があるとの課題が示されました。

 d)まとめ

 第1回の目標である「水害の危険性を自分の問題として理解する」ことは概ね達成されたのではないでしょうか。次は、新小岩を安全な街にしていくために、個人として、街として水害に対してどう備えていくべきかが課題だと思われます。
 最後に水害の被災経験のある人間国宝の小宮さんから経験談をいただきました。過去の経験から学ぶことの重要性が再認識されました。

◆アンケート速報

 水害に対する個人の取り組みについて変化が見られました。ほとんどの人が対策を行っていませんでしたが、WS後は半数以上の人が新たに取り組もうと回答しています。実際の行動に結びつけることが次の課題です。
 また、地域の被害状況が分からないと回答していた人がぐっと減りました。逆に安全に避難できるかどうかという問いに対して、分からないと回答した人が増えました。避難についての検討が今後の課題であることを示しています。

ワークショップの様子
(左)新小岩公園の裏手から現場調査開始 (右)中川堤防上から蔵前橋を望む
(左)外壁の高さと強度の測定 (右)中川堤防の外壁にはこんな亀裂が
(左)各班ごとに代表して発表 (右)熱心な討議が続く

 

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