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活動の年次記録
平成18年度第2回ワークショップ
平成19年1月26日
「水害対策支援システム」に関するワークショップ 第2回
「地域の防災体制を確認し、自助、共助の考えるべきことを明確にする」
加藤先生
平成16年度に内閣官房都市再生本部から当NPOに委託された「全国都市再生モデル調査」に関連する「水害・地震水害対策支援システム」を東京大学の加藤先生にお願いして開発しました。
このシステムを更に利用しやすいシステムにして一般化するため、昨年度から河川環境管理財団の河川整備基金による研究助成を受けて、新小岩地域の有志の方達とワークショップを実施しています。このワークショップは、加藤先生を中心とした若手研究者数名が司会役等を担って運営しています。今回、その第2回の模様を報告します。
◆第2回ワークショップの報告
去る1月26日に開催されたワ-クショップの成果について報告します。
(東京大学大学院/加藤孝明・記)
a)「自助、共助、公助」の理念と「自助、共助の重要性」
第1回ワークショップの中でも登場した「自助、共助、公助」、ここではその意味について理解を深めました。個人、町、行政のすべての主体が防災に取り組むべきだというのが基本的な意味です。しかし、それだけではありません。
「自助,共助、公助」のすべての主体が、地域で起こりうる災害状況像を理解し、その上で、それぞれの責任分担、役割分担を相互に理解し、それぞれのできることを進めていくということを意味しています。防災における公助の役割はとても大きいのですが、それだけでは町の安全は確保されません。自助、共助の頑張りがあってはじめて、町の安全が確保できるということを改めて確認しました。
b)「公助」の防災体制を知る
第2回のテーマ「自助、共助で行うべきこと」を考える前に、「公助」の防災体制とその限界について良く知る必要があります。ここでは、国土交通省荒川下流河川事務所の森久保さんと葛飾区水防担当の三浦さんにそれぞれ「公助」としての取り組み状況について説明を受けました。
国土交通省荒川下流河川事務所の森久保さんからは、「河川行政を取り巻く環境の変化と荒川の治水設備の概要」というタイトルでご講演をいただき、荒川の治水を軸に様々な内容を勉強しました。荒川の長い歴史をみると、地域の発展は治水とともにあること、今の地域の繁栄は先人の努力の積み重ねのおかげであることを改めて感じました。
その一方で、最近の地球環境問題の影響による集中豪雨が頻発し、これに対応することが昨今の新しい課題になっていることを知りました。地球環境の変化を考えると、水害が発生する可能性が高まっています。更に市街地の変化をみると、地盤沈下や地下空間の増加等、水害に対して脆弱になっていることを勉強しました。
こうした状況に対応する新しい対策が行われています。200年に1回の大雨にも対応できるスーパー堤防(緩傾斜の幅の広い堤防)の整備、「ハザードマップ」の普及促進、更に浸水時の水位や避難場所を示した標示を町なかに立てる「まるごと町ごとハザードマップ」という対策等が流域で進められていることを知りました。
葛飾区水防担当の三浦さんからは「区の防災体制」について説明を受けました。葛飾区の災害情報の伝達手段としては、ラジオ(かつしかFM)、防災無線、広報車、葛飾区のホームページと多様な手段が準備されていること、また平成19年度の公開に向けて「洪水ハザードマップ」づくりが進んでいること、水位標示板の設置を予定していることを知りました。
古くから治水対策が行われていますが、地球環境の変化を考えると、水害の発生する可能性は十分にあります。水害に備えて治水だけではなく、市街地側で備えることが重要です。「公助」として様々な対策が行われていますが、水害から生命、財産を守るためには「自助、共助」の双方が重要ではないでしょうか。
「公助の防災体制を知る」河川課長(左)と葛飾区の三浦さん(右) |
C) 重要なキーワード
防災を考える時、「経験」を活かすこと、「情報」を入手することはとても需要です。しかし一方で、頼りすぎるのは危険です。次に襲ってくる災害が以前と全く同じとは限りません。例えば、関東大震災で消火活動に成功しましたが、戦災で多くの住民の命が失われた神田佐久間町の例もあります。
また、情報を集めようとするあまり、避難開始時間が遅くなり被害に遭ってしまうこともあるかも知れません。事実、最近の津波情報に対する人々の行動をみると、このことが示唆されています。「経験」と「情報」はとても重要ですが、頼りすぎることも危険であるということを確認しました。
d) 自助、共助の考えるべきことを明確にする
「公助」の防災体制を理解したところで、次に各テーブルに別れて「自助、共助として考えることを明確にする」ことを目的に議論を行いました。 被災時にとくに重要な次の三点、①情報入手手段、②避難場所、③避難手段、に焦点をあてて考えました。その後で「自助、共助」で何ができるかという事について議論しました。
テーブル議論では「避難する時に近所の人に声をかけて危険を伝える」、「要援護者を救助する」、「要援護者の所在を確認する」、「水害の危険を広報する」、近所のマンションと避難協定を結ぶ」等、たくさんの具体的なアイデアが出されました。
テーブル議論の様子(左/右) |
e) まとめ
今回のワークショップでは、「公助」の防災体制を知ること、「自助、共助」で考えるべきことを明確にするという目的は達成できたのではないでしょか。今後、「自助、共助」による具体的な対策に結びつけていくことが町として課題ではないでしょうか。
テーブル議論の取りまとめ
- ◆環境計画がご専門の法政大学の神谷さんが特別参加されました。古代からの関東平野の推移を非常にきれいなパネル展示で説明していただきました。もともと海だったところに私たちが今住んでいることを初めて知りました。
- ◆前回に引き続き、人間国宝の小宮さんも参加されました。また次回もよろしくお願いいたします。
- ◆最後に首都大学の市古先生より、「水に親しみながら、水で楽しみながら水害に備える」という発想も必要との意見が出されました。
- ◆怖がりすぎず、侮らず、楽しく備えたいものです。「楽しい防災」は、防災を長続きさせる秘訣かも知れません。(加藤コメント)
- ◆次回は4月21日(土)に開催します。テーマは「対策の検討と今後やるべきことを明確にする」です。具体的に対策を検討したいと思います。
第2回ワークショップ開催風景
ワークショップ参加の皆さん(左/右) |
(左)各班ごとに代表して発表 | (右)中川町会長も代表して |