活動の年次記録

25年度総会盛況理に終了

-恒例の講演には地元在住の寺島玄氏が講演、
       荒川開削後の新小岩の歩みを紹介-  

平成25年度当NPOの総会は6月29日、土曜日に大成化工の厚生棟で開催されました。恒例の講演が地元在住の寺島玄氏による「荒川開削と新小岩の歩み」と題するものだったこともあって。地元からも多くの方が参加されました。その後評議員、理事会に引き続き総会が行われ、活発な質疑が行われた後、予定された議案は全て提案通り承認されました。

恒例となっている総会に先立つ講演は、今年は葛飾区西新小岩三丁目在住の、寺島玄氏による「荒川開削と新小岩の歩み」と題する講演でした。
この講演で寺島氏は荒川開削を契機に葛飾区は大いに産業が振興されたのだが、その結果地下水の汲み上げによる地盤沈下によって災害のリスクが増えたことを指摘、開削により発生した残土は60%が堤防や工業用地の造成に使われたこと、この工業用地造成により茂木財閥の那須アルミニュウムが現在の新小岩駅北部に進出、戦時中にはB-29に対抗するために高度12,000mまで上昇し、戦闘可能なコックピット付戦闘機キ94の部品が製造され、金町の大東紡織で組み立てられたこと、この飛行機は昭和20年8月14日に1号機が試験飛行を終えたところで終戦、その1号機は目下米国のスミソニアン博物館に保存されていること、戦後は多くの人が主に千葉県からこの地に移住してきたがカスリーン台風、キティ台風、伊勢湾台風などによる災害を契機に共同して災害に対処するという住民の絆が深まったことなど、興味深いお話を伺うことが出来ました。
なお、寺島氏はカスリーン台風で被災しながらも防災の最前線に立った上平井警防団団員で当時22歳の横田實氏のつづった防災手記「カスリーン台風水害点描」を今日の防災に生かすべく刊行し、「カスリーン台風を語り合う会」を開催されてます。
最後に寺島氏は「角川春樹小説賞」を受賞した又井健太氏の「新小岩パラダイス」について触れ、又井氏も述べているように新小岩の街の持っている良さは「誰でもやさしく受け入れてくれる奥ゆかしさ」にあるのではと指摘されていました。

 

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葛飾区西新小岩三丁目在住 寺島玄氏による講演

 

総会では冒頭に青山元東京都副知事からの祝辞が紹介された後、石川理事長から新しく就任された評議員、渕井恵子氏、東原洋子氏、百瀬敏明氏、竹本利昭氏の4名が紹介され、竹本氏が議長に示されました。次いで石川理事長から「私たちのこれまでとこれから」と題する挨拶がありました。
この中で、理事長は設立時の思いとして「この町に川があれば良いなぁ」とのことから隅田川の箱崎地区の高規格堤防の設置と川沿いにテラスを設けたことにふれ、新小岩でNPO活動を始めたのは、水の脅威にさらされなければ水と緑に恵まれた快適な街になること、ただ住んでいる皆さんは万一洪水が起こり破堤すれば住まいが水没してしまう危険性を帯びているのにその危険を認識していないことに鑑み、洪水になればどの高さまで水が来るかを示す水位表示板を設置することで、街の人々が日ごろ忘れている潜在的脅威について注意を喚起することから活動を始めたのです。水位表示はその後区でも取り上げられ、広く電柱に表示されたこと、今では加藤先生のご尽力によって地域が洪水に襲われた時の状況をi-padやi-phoneで疑似体験できるアプリ「天サイ!まなぶくん」が開発されているまでになりました。また水害時にはボートを使った避難や救援物資の運搬が必要になるのでそのための訓練を実施するべく各町会にゴムボートを寄贈し葛西臨海公園でボートを使った避難訓練を実施しました。その結果、昨年は新小岩北地区の連合町会がこのボートの他に区内の小・中学校に配備されている組み立て式ボートも使って、NHKのニュースでも取り上げるほどの大規模な避難訓練を行うまでになりました。他方、区のハザードマップに指定されている避難先の松戸市まで公共交通機関を使って避難する訓練も行い多くの問題点を洗い出したり、町会の皆さんを対象にシンポジウムを行い、大規模災害に備えて自助・共助の体制を整えていく決意を表明した「新小岩宣言」を発表したり、地域で活動する様々な方々が対等な立場で問題意識を共有し、これまでの活動から得た知見を分かち合い、学びあい、知恵を出し合って安全・快適なまちづくりを考えていく場としての「輪中会議」を設立し、地域の力を合わせることによって快適な街を、暮らしを大災害から守ろうといった活動を展開してきました。
この集大成として今年の3月にシンポジウムを行いました。そして、今後30年間に70%の確率で起こるといわれている首都直下地震から我々の街を・暮らしを自助・共助で守っていこうとの考えで今後も皆さんとがんばっていきたいとの力強い呼びかけであいさつは締めくくられました。

 

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総会参加者

 

次いで議案の説明と質疑応答が行われ、最終的に全ての議案が提案通り承認されました。この間に提起された質問とそれに対する回答を要約すると次の通りです。

質問1:
 決算報告収入欄にある業務委託費の内訳は?
回答 :
 協議会の活動のうち(財)都市防災研究所に取りまとめを依頼した「地域の安心・安全プログラム」の取りまとめにあたっての資料の整備提供などの協力並びに東京大学生産技術研究所にお願いした近隣関係継続計画(LCCP)を支えるツールの開発にあたってそこに盛り込まれる要素のとりまとめと表示方法についての検討などへの協力に対する対価が主なものである。
 質問2:
 「輪中会議」に参加して、種々の分野の方の意見を聞くことで大変有意義だったが、今後も継続して行われるのか。
回答:
 今後もぜひ継続して行ってゆきたいと考え第3号議案でもその旨記載している。
 幸い、東大が文科省地域防災支援事業として受けた助成金からの支援も期待できるとのメッセージを得ている。
質問3:
 NPOの日常の活動をタイムリーに知るため、かねてホームページの改良をお願いしていたが、進捗状況いかん。
回答:
 このほど(株)キャドセンターにお願いしてホームページを一新した。これからは日常活動の状況をタイムリーに発信できるようになると思うので実物で見てほしい。ということで、(株)キャドセンターから一新されたホームページのデモンストレーションが行われた。
質問4:
 今後のNPOの活動の方向について知りたい。これまで地震などで堤防が壊れて洪水になった時、手近の高台やマンションへ緊急避難する必要のあることを学んだが、そろそろ概論を離れて具体的に高台や避難先のビルをどう確保するかについて議論する段階になったと思う。区も東大の加藤先生に研究委託をしていると聞いている。地元町会もできることは協力するつもりだが、加藤先生としては町会地元にどんなことを期待委しているのか。

回答:
 本日加藤先生は急用で欠席だが、メッセージを受けているのでお伝えしたい。加藤研では区から受託して耐水街づくりと高台の確保について短期と長期に分けて検討しているが結果がまとまるにはもう少し時間がかかるので今しばらくお待ちいただきたい。これとは別に第3号議案にも触れられているように高台化のための勉強会に関する助成制度もあるので、立ち上げについて地元の方を支援していきたい。
質問5:
 最近発表された利根川水系の河川整備計画によると「この地域においては、破堤すれば十分な避難時間が確保できないままに浸水する事態になるなど、人的被害が発生する可能性が特に高いことから計画規模の治水対策と併せて超過洪水対策を実施しているところである」との記載がある。荒川水系については3.11以前に作られたためこのような記述はないが、見直しの際にはこ取りあげられる可能性はあるのか。
回答 :
 利根川・江戸川の整備計画がまとまったので、今後この流れに沿って荒川の整備計画も見直していきたい。

 

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会場からの質問

 

総会終了後40名余りの方が参加してささやかな懇親会を開催しました。地元の皆さんも多く参加され、なごやかな懇談のうちに6時過ぎに散会となりました。今年は外部から大きな助成金を受ける予定はありませんが、「輪中会議」の拡大・発展をはじめ地道な活動を続けていきたいと思っています。皆様方の一層のご支援を賜りますと共に、新しい会員として参加されるようお願い申し上げます。

以上

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