- 2023.07.02
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令和4年度総会結果について(お知らせ)- 2022.10.15
輪中会議とシンポジウム
2022/10/15 第15回「輪中会議」を開催しました- 2022.07.03
NPO法人について
令和3年度総会 全議案承認で終了- 2021.12.03
ア!安全・快適街づくりニュース(年刊誌)
2021.09 vol.27- 2021.04.24
輪中会議とシンポジウム
2021/5/9に Web「輪中会議 2021」を開催しました
活動の年次記録
事業の実施内容及び実績に関する報告書
-新小岩北地区輪中まちづくり事業-
葛飾区新小岩北地区ゼロメートル市街地協議会
第1章.地域の課題
葛飾区新小岩北地区は地盤沈下により大規模水害の際は、3~5mの水面下になる、海抜ゼロメートル市街地である。これまで8年にわたる町会、NPO、大学、専門家、行政の協力関係の中で、広域ゼロメートル市街地の防災意識が高まり、防災訓練などの自助そして共助に向けて取組みが進みつつある。一昨年3月11日に東日本大震災の発生を受けた、地域の危機意識の高まりを踏まえ、地域住民そして地域のまちづくりの担い手が協力して大規模水害時の住民の安全を守るための活動実施が今こそ必要となっている。
第2章.モデル事業の概要
ゼロメートル市街地において大規模水害が発生した場合でも、住民の命が守られるモデルとなるコミュニティ環境づくりを進めることを目的として、葛飾区新小岩北地区において河川・水路に囲まれた『輪中』を単位とした安全・安心まちづくりの仕組みを構築する。このため次の4つの事業を実施する。実施事業の詳細は4項記載の通りである。
- ①東日本大震災の被災地の教訓を学び、平常時から、地域の安全を守る『近隣関係継続計画(LCCP)』を検討し、LCCPを支えるツールや仕組みづくりを進める。
- ②東日本大震災の被災地と交流・支援を行い、被災地からは災害に備える実践の知恵を得、被災地へはコミュニティ再生への支援を行う。
- ③水害に運命共同体として備える地域を、『輪中地域』として位置づけ、地域の様々な担い手が協働して取組む組織『輪中会議』を立ち上げる。
- ④『輪中会議』が実践する活動や被災地との交流支援を支える『輪中基金』を創設するための準備活動を行う。
第3章.マルチステークホルダーの概要(役割分担)
葛飾区新小岩北地区ゼロメートル市街地協議会を構成するメンバーとその役割は下図の通りである。
第4章.実施事業の詳細な内容
実施事業の詳細は次の通りである。
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(1)葛飾区新小岩北地区ゼロメートル市街地協議会企画会議の開催
23年度実施予定の事業企画の内容調整・目標設定・スケジュール調整のため3回にわたりファシリテーターによる企画会議(以後ファシリテーター会議と呼ぶ)を開催、構成団体の役割分担・活動内容を検討し、事業計画を確定した。24年度に入り、同年度の事業についても同様にファシリテーター会議を随時開催し、事業実施に際し必要な細部の修正・変更について決定し、事業を実施した。その議事録は添付1-1~1-16の通りである。 -
(2)地域の安心・安全プログラムの作成
構成団体の研究者を中心としたメンバーにより「地域の安心・安全プログラム」作成のための検討会を毎月開催、その骨子を23年度中に添付の通り取りまとめた。それにそって24年度に内容の再度レビューして、プログラムとした。(添付2)
このプログラムを生かして区内の各種勉強会を行った。(4)項ご参照。 -
(3)近隣関係継続計画(LCCP)を支えるツールの開発
近隣関係継続計画(LCCP)を支えるツールの開発については広域ゼロメートル市街地研究会のメンバーを中心に検討会を重ねた結果、そのコンセプトが23年度末にはまとまったので、24年度に正式にツールの開発を東京大学生産技術研究所に発注した。その後プロトタイプを入手し、実際に使用テストを行い、使い勝手の悪い点をフィードバックし、改良を加え、25年1月23日完成したアプリを「天さいまなぶくん」と命名してプレスレリースを行った。このアプリはこれまで洪水ハザードマップ等の平面でしか表現できなかった洪水時における葛飾区内各所の浸水状況を立体で表現するようにしたもので、併せて避難所等の位置も把握できる。(「天さいまなぶくん」の使用法については添付3参照)このアプリの仕組みはi-padやi-phoneのカメラから取り込んだ映像に荒川、江戸川、中川・綾瀬川及び内水氾濫時の洪水ハザードマップで表示している浸水深のイメージ映像を重ね合わせたもので、小学生の子供でも水害時のイメージが分かるような工夫がされている。プレスレリースの結果反響は大きく、NHKや葛飾ケーブルテレビで放映されたり、朝日、読売新聞等でも大きく報道された。(プレスレリースコピーは添付4参照)このi-padを持って自分達の街を歩き、どのくらい浸水するか、どのルートでいけば深水深が浅く移動が可能かなどを体験する会が平成25年2月10日と17日の2回にわたって行われた。10日は中学生を含む輪中会議のメンバーが三つのグループに分かれ、三方向に歩き、17日は町会の皆さんが五つのグループに分かれ五方向に向かって歩いた。17日の参加者に対して行ったアンケートの結果は添付5の通りである。また、街歩きの際の写真は別添6,7の通りである。参加者は高齢者でも分かりやすかったという声や普段は気付かない道の起伏を浸水深の変化で始めて認識したり、広域避難場所が水害時には浸水してしまい、機能を果たせないことなどが分かり大変有益だった。今後他の地域にもこのアプリが広く普及していくことが望まれる。
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(4)町会等、種々な地縁を含めた勉強会
- ①平成23年10月23日新小岩学園(添付8)、同年11月27日上平井小学校(添付9)、平成24年2月26日二上小学校を避難所として利用する町会員を対象にした参加訓練 (添付10)に合わせて大水害に対する避難対策中心のワークショップを開催した。
- ②平成24年10月26日に新小岩学園(添付11)、同年
- 10月29日上平井中学校(添付12)、同じく11月27日上平井小学校で地域の置かれている危険を周知させるとともに、それに対する対応策に関する出前講座を実施した。
- ③平成24年に入っては上平井中で同校理科部のメンバーを対象に8月7日、9月27日にワークショップを実施した。特に9月27日には洪水による浸水状況を疑似体験できるツールのプロトタイプのものを使って構内の浸水深をチェックし、何階に避難すればよいかを確認すると共に、ツールに対する改良希望事項の聴取も行った。上平井中理科部とのワークショップ結果は添付13の通り。
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④平成24年10月27日に二上小学校で行われた地元町会主催の二上まつりの場を借りて来場者に洪水時の浸水状況を疑似体験できるアプリ「天さいまなぶくん」をインストールしたi-padで学校周辺の浸水深の確認を行うと共に、浸水状況の疑似体験をしてもらった。また、24年11月10日には新小岩学園で小学校5,6年生と中学1,2年生を対象に出前講座を行なった。(添付14)
この他、平成25年2月22日にも松上小学校6年担当の教諭からの要請にこたえて同教諭担当の組の生徒に地域の包含する災害の危険とそれに対する対応についての出前講座を行った。
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(5)被災地との交流・支援
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①被災地との交流は当初石巻との交流を計画していたが、地域が広大であり、市全域ではなくそのうちの一地域との交流とならざるをえないため、一つの自治体全体がつかめるようなコンパクトな地域との交流が望ましいとして、一部会員が既に2年にわたり接触を持っていた南三陸町と交流することに決定し、3月9,10日に協議会メンバー21名で被災地を訪問、現地の現況と被災経験を聴取すると共に、復興に当たって直面する課題は何か、それを乗り越えるためには何が必要かについて討議することを目的に現地を訪問した。
現地でのスケジュール及び面談した方々との話し合いの要点は添付15、16の通りだが、お会いした皆さんがきわめて雄弁であり、詳細に自分の経験を語り、ご自身の所属する会の直面する問題点について強く訴えられていたのは印象的だった。
直面する問題について伺ったところでは、行政が急いで進めようとしている事項と自分達の希望する事項がうまくかみ合っていないことであり、両者の間のコミュニケーションが十分取れていないことで、これが復興を遅らせている大きな原因の一つとなっていると思われる。
一例をあげると、行政側は復興予算の使用期限が切れる前に早く着手しようと考えているが、住民側は行政ともっとしっかり話し合って孫子の代までを考慮したしっかりとした計画を作ってから取り組むべきだといったことや、とり急いで行う必要があるのは被災した沿岸部の住居跡などを撤去し更地にすることではなく、高台移転の用地確保と建築着工を可能にするような土地・インフラの整備であるとかいったことがあげられる。住民の意向が充分取り入れられるためには住民中心の協議会に行政の責任ある人が参加し、その要望をしっかり聞いて計画の実現に役立てることであり、話し合いに時間がかかるようなら国に復興予算の執行期間の延長を働きかけるべきであろう。
他方、行政の側でも多くの人材を震災で失い、人手不足の上に、各地の市町村からの応援職員は能力はあっても現地の事情に疎い上に長期間とどまれず交代となるため充分に機能しない面もあること、住民側もいつまでも待てないといったことから他の地域に産業が移転してしまい、地元の職場が失われてしまうためにことを急がざるを得ないことなど、気の毒な面も多い。
このような状況下で国に求めることは「地元のことは地元で考え地元の人に任せる」ことに徹し、復興予算は地元がプールして複数年度に使えるようにするなどの手を打つことが必要と考えられる。
また、支援する自治体は派遣者をかなり長期間派遣することで復興を促進する必要があろう。
1泊2日と短い訪問だったが、多くのキーマンの方々と効率よく会うことが出来、所期の成果をうることが出来た。その際の写真は添付17の通りである。
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①被災地との交流は当初石巻との交流を計画していたが、地域が広大であり、市全域ではなくそのうちの一地域との交流とならざるをえないため、一つの自治体全体がつかめるようなコンパクトな地域との交流が望ましいとして、一部会員が既に2年にわたり接触を持っていた南三陸町と交流することに決定し、3月9,10日に協議会メンバー21名で被災地を訪問、現地の現況と被災経験を聴取すると共に、復興に当たって直面する課題は何か、それを乗り越えるためには何が必要かについて討議することを目的に現地を訪問した。
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(6)輪中会議立ち上げ
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①東日本大震災でもみられるように災害時には地域の力が欠かせない。
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12月9日に開催された第3回では中学生の水害の研究活動報告、Iパットで浸水体験・プールでボート乗船下船体験報告、東京都防災隣組シンポジウム報告等に引き続き「わからないことをなくす」をテーマに討議を行った。
第4回の会議では東京大学に委託し、開発した水害時を疑似体験できるアプリ「天さいまなぶくん」を持って実際に自分達の街を歩くことを実施した。(添付6、7の写真ご参照)
この輪中会議の立ち上げを広く紹介すると共に交流のある南三陸町の代表者の方にその経験と直面する課題について話してもらうことを主眼としたシンポジウムを平成25年3月23日に足立区の天空劇場で開催したことについては第7項をご参照願いたい。
輪中会議の議事録は添付(18) -
②輪中基金の立ち上げ準備
輪中基金の立ち上げについては24年度の新小岩北地区輪中まちづくり事業完了後、25年度に輪中基金を立ち上げれられるよう、準備作業を進めた。
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①東日本大震災でもみられるように災害時には地域の力が欠かせない。
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(7)シンポジウムの開催
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①足立・江戸川・葛飾区住民を対象に「街を、暮らしを、みんなで守る~大規模災害に備えて~」と題するシンポジウムを平成24年3月18日江戸川区総合文化センターで開催した。
なお、このシンポジウム実施の際にアンケートを行ったが、その結果は添付23の通りである。 -
②平成25年3月23日には足立区の東京芸術センター・天空劇場で交流のある被災地の宮城県南三陸町から4名の方を招き、「大規模災害に備えて街を、暮らしを、みんなでどう守るか~東日本大震災の経験を共有し、広域ゼロメートル市街地での備え方を考える~」と題するシンポジウムを開催した。このシンポジウムにはコーディネーターとして東京大学生産技術件所の加藤准教授に加えてNHKニュ
シンポジウムのポスターは添付24、25の通り。シンポジウムの結果は添付26、アンケートの結果は添付27の通りである。
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①足立・江戸川・葛飾区住民を対象に「街を、暮らしを、みんなで守る~大規模災害に備えて~」と題するシンポジウムを平成24年3月18日江戸川区総合文化センターで開催した。
第5章.事業実施上の課題
当協議会が今回の活動の総仕上げとして立ち上げた「安全・快適街づくり輪中会議」は、地域で活動する様々な方々に対等な立場で参加していただき、皆で問題意識を共有し、これまでの経験から得た知見を分かち合い、学び合い、知恵を出し合い、よりよい新小岩北地区を考えていく場として位置付けて開催したものである。その結果、確かに従来の町会の方々を対象とした活動から新しいメンバーとして、小・中学校の先生や中学生、福祉分野に従事する民生委員や地域包括支援センターの相談員の方々、保育園や介護施設の方、小・中学校のPTAの会長の方など参加者の幅は広がった。特に若年層の参加者を増やす策として小中学校で防災に関する出前講座を積極的に行い、その後災害時の避難方法について家庭で親子で話しあうことを狙いとしたアンケートを生徒に配り、これをきっかけに父兄の皆さんの防災に関する意識の向上を狙う活動を行ったことは徐々にではあるが効果を発揮し、今後の輪中会議の展開に寄与するものと期待している。とはいえ、商工会の方々の参加が少ないこと、この地域の大学関係者の参加が得られていないこと、働き盛りの30代から40代の方で次代を担う方々の参加が少ないなどまだ十分な広がりを見せるには至っていないのも実情で、今後この分野の方々に参加していただく為の手立てを講じてゆく必要がある。また、この輪中会議に参加した人々のなかから今度は自分達がリーダーになって自分の属する分野で独自に輪中会議を主催して活動の輪を拡げていくまでの新しいリーダーの育成を引き続き行っていくことが必要でなる。この意味でも25年度以降も輪中会議を引き続き開催し、輪中会議の輪を広め、新しいリーダーの更なる育成に努める予定である。
第6章.モデルとして他のNPO・行政等に紹介する仕組み
輪中会議の手法は約30人が集まり各自のプロジェクトに対する思いを語り今後取り上げる課題を次回までに持ち寄る。集まった課題につき3回目以降その解決策を語り合い、問題点を宿題として次回につなげる。これを繰り返し各グループが課題に対し共通の認識とその解決方法について知見を共有するに至るまで継続して実施する。そして参加者がこの「輪中会議」ノウハウを獲得したら今度は彼等がリーダーとなり新しいグループに上記活動を行う。この繰返しで活動の輪を広げて自助・共助力を高め公助との連携を深めていくもので、この手法は知見の共有と拡大に有効な方法として種々の活動に活用できると考える。
また、協議会が開発した「天さいまなぶくん」は基本的に他の市町村でも利用可能なものと判断る水害だけに留まらず、火災の場合の避難訓練についても利用したい。
第7章.平成25年度以降の予定
平成25年度以降も輪中会議は継続して開催し、更に参加者の輪を広げていく。そして、その中から新たに独立してリーダーとなる方の更なる育成に努める。なお輪中会議は単なる座学・討議の場だけではなく、学校等のプールを利用したゴムボートを使った避難訓練、船に乗って川から街を見るなどの船上座学訓練、「天さいまなぶくん」をインスートルしたi-padを持って街歩きをし、自分達の街に潜む危険を知ると共に安全な避難経路を探す訓練などを組み合わせて行うことで、楽しみながら学んでいくことが必要なのは言うまでもない。加えて第5項に述べた小中学校での出前講座と災害時の避難方法について家庭で親子で話し合うためのアンケートを他の小中学校でも実施していく。他方、大阪、名古屋などの広域ゼロメートル市街地域の団体との交流を図り、相互にその知見を高めていきたい。
添付書類
- 1. ファシリテーター会議議事録
- 2. 地域の安心・安全プログラム
- 3. 天さいまなぶくん」の使用法
- 4. プレスレリースコピー
- 5. アンケート結果
- 6. i-padを使っての街歩き-輪中会議メンバーによる-
- 7. i-padを使っての街歩き-町会メンバーによる-
- 8. 23年10月23日新小岩学園での勉強会
- 9. 23年11月27日上平井小での勉強会
- 10.24年2月26日二上小での勉強会
- 11.24年10月26日新小岩学園での勉強会
- 12.24年10月29日上平井中での勉強会
- 13.24年9月27日上平井中理科部での勉強会
- 14.24年11月10日松上小、新小岩中での講演会
- 15.25年3月9,10日南三陸町訪問スケジュール
- 16.南三陸町での交流報告書
- 17.南三陸町訪問時の写真
- 18.輪中会議議事録
- 19.24年3月18日シンポジウム・チラシ
- 20.24年3月18日シンポジウム・ポスター
- 21.24年3月18日シンポジウム・プログラム
- 22.24年3月18日シンポジウム結果
- 23.24年3月18日シンポジウム・アンケートと分析結果
- 24.25年3月23日シンポジウム・チラシ兼プログラム
- 25.25年3月23日シンポジウム・ポスター
- 26.25年3月23日シンポジウム概要
- 27.25年3月23日シンポジウム・アンケートと分析結果
以上